技能検定制度について


技能検定とは、働くうえで身につける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度で、
機械加工、建築大工やファイナンシャル・プランニングなど全部で128職種の試験があります。
試験に合格すると合格証書が交付され、「技能士」と名乗ることができます。

試験の内容

 実技試験と学科試験により行われ、両方の試験に合格することが必要です。
 ※実技試験か学科試験のどちらか片方のみ合格した方は、次回以降は不合格となった試験のみを受検し
、合格することで、技能士となることができます。(但し、特級については合格した日から5年間有効です。)

<実技試験>
 職種によって次の(1)と(2)の両方を行う場合とどちらか一方を行う場合があります。
 (1)作業試験
制限時間内に物の製作、組立て、調整等を行う試験です
(2)ペーパーテスト
実際的な対象物または現場の状態、状況等について説明した設問により、
判別、判断、測定、計算等を行う試験です。
<学科試験>
 都道府県職業能力開発協会が実施する試験は、○×式と選択式により出題され、
それぞれ25問ずつで全50問(特級は選択式50問、3級は○×式30問)です。
民間の試験機関が実施するものは、職種によって異なります。

<受検資格>
受検する職種での仕事の経験年数(実務経験年数)によって受検できる等級が異なります。
    ○1級・・・・・7年以上
  ○2級・・・・・2年以上
  

(以上、厚生労働省HPより抜粋)


平成16年に受験資格である実務経験年数が短縮されました。
いわゆる職人と呼ばれる世界では昔は「たたき上げ」といわれたように
中学卒業後すぐに見習いに入る人が多く、学歴は無用の長物でしたが
近年では高校卒業後は当たり前、大学卒業後に職に就く人も珍しくなくなりました。
実務経験年数の短縮にはそのような背景も少なからずあるように思います。
手仕事の技能習得度は経験によるところが大きいのですが
理解や応用といった能力や体力的な適応力を考えればある程度納得できるかと思います。
受験資格だけを見ると2級受験は見習い終了時、1級受験は一人前の証という感じですが
試験は限られた課題に依りますので実際はそう単純なものではないです。

ちなみに平成25年度の畳製作技能士の実技試験内容は次のようなものです

1級 

手縫いによりへり付き板入れ畳(1枚)を製作し、試験台へ敷き込みを行った後、床の間畳(ござ)の製作及び取付けを行う。
標準時間 5時間   打切り時間 5時間30分

2級

手縫いによりへり付き素がまち畳(1枚)を製作し、試験台へ敷き込みを行った後、薄べりの製作を行う。
標準時間 4時間   打切り時間 4時間30分





技能士番号について

技能士資格を持つ職人が在籍する事業所のホームページを見ると
本人が技能士であることや技能士が在籍している等の表記はよく見かけますが
それぞれ固有の技能士番号を明記している例は案外少ないようです
技能士有資格者は必ず検定試験の合格証を所持しています
固有の技能士番号は合格証書に記載されており
技能士番号を明記することは信頼性につながるかと思うのですが
証明の意味でお客様に提示するケースはほとんどないようです。
技能士番号は5つの数字からできており、それぞれの数字に意味があります

たとえば私の技能士番号は90-1-045-14-0001です

90…技能士資格を取得した年号(西暦)の下二桁
1…等級
045…職種
14…受験した県(14は神奈川県、概ね北から順番のようです)
0001…合格番号(成績順かどうかはわかりません^^)

技能士番号を目にする機会があったら参考にしてみてください




技能士資格の意味合い

畳店の選び方にも書きましたが
一級技能士資格を持たない職人がすべて一人前ではないというわけではありません
また、免許ではありませんので技能士資格がないと商売ができないわけでもありません
制度発足当初は「あんなもの」と技能士資格をバカにする年長職人もいたほどです
昔は職人が持つ技術はお客様にひけらかすものではなく
職人同士が競い合い、切磋琢磨し、評価しあうものでした
一級技能士の試験課題は一人前の職人ならできるのが当たり前だったのです
ただし、その当時でも資格を持たずに制度を批判するのは決して格好の良いものではなく
技能検定制度について語るなら一級技能士試験に受かってからにしろという考えもありました

畳を作るための機械が普及し、一方で畳需要が減少傾向となってしまい、
安さを追う風潮から本当の意味での「良い仕事」を求められる機会も少なくなり、
畳職人本来の熟練技能が稼ぎに結びつきにくくなってしまったった近年では
技能士資格に対する考え方は昔とは随分違ってきていると思います

機械がない時代には複数の熟練職人を抱える畳店が数多く存在し
一級技能士を単なる肩書きと考える職人が多かったのですが
畳職人本来の熟練技能なしでも機械任せで日々の仕事をこなせる今では
一級技能士資格を技術力のアピールに使う畳店も少なくありません

試験課題の「手縫いによるへり付き板入れ畳」は近年その需要がめっきり減ったため
本来、畳職人の腕の見せ所的仕事でありながら、触れる機会がほとんどなく
若い職人が実務経験を通して技術を身につけられた昔に比べ
向上心が強い若い職人にとってはある意味かわいそうな時代ともいえます
一級技能士資格を取得するために課題作業を覚え、練習する若い職人もいるほどです

今ではほとんどなくなってしまった仕事だから覚える必要ないんじゃないの?
そう思う方もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません
手縫いによるへり付き板入れ畳作業には畳製作作業の基本がぎっしり詰まっており
これをしっかり身につけることは機械が普及した現在でも様々に応用が利きます
それだけに一級技能士資格を一人前の証ととらえる若い職人は少なからず存在します

このように、資格がなくても一人前ならできるのが当たり前だった時代と
できなくても恥ずかしくない時代の資格には職人側のとらえ方に大きな違いがある一方で
お客様にとっては情報が氾濫する中で技術力を客観的に判断する指標となります

一級技能士資格を軽んじる者は一級技能士資格を持っていないか
持っていても何の役にも立たないと勘違いしているかのいずれかです

お客様に技術力をアピールするために「看板」としての一級技能士を掲げ
「一級技能士がいる店」、「一級技能士の店」等を宣伝文句に使う業者は珍しくありませんが
一級技能士はあくまで個々の職人自身の技術を証明する国が認めた資格です
お客様が一級技能士資格を安心して畳工事を頼むための判断材料にするなら
一級技能士が経営しているだけではなく、一級技能士が在籍しているだけでもなく
お客様の大切な畳を最初から最後まで責任をもって扱う当の職人自身が
一級技能士であって初めて意味を持つことになります