縁なし畳について

近年、個人のお客様だけでなく建築関係の業者さんも「琉球畳」という呼称をよく使います。
縁無畳もしくは縁無半畳の市松敷きのことを指しているようですが
元来、琉球畳とは青表を使用した畳の呼称であって縁無畳の総称ではありません。
(沖縄県地方独特の畳表を使用した畳を琉球畳と呼ぶこともあるようです)



昔は縁無し畳に使われる畳表は青表(琉球表)が一般的でした。
青表はとても丈夫で丸イグサ表に比べ火気にも強いため
元々は人が多く出入りする商家の帳場や囲炉裏のある茶の間など
特に耐久性を求められるような場面で使われていました。
青表の原料である「七島い」は丸い草とは全く別の品種で
使う経糸も極太の麻糸であるため、見た目の上品さはなく
いわゆる座敷と呼ばれる部屋に使われることはほぼありませんでした。

生活様式が徐々に洋風化し、様々なフロア材が開発される中
縁なし畳は一時期その需要がほとんどなくなりつつありました。
新築住宅における和室の割合が減少傾向になると
和室そのものが特別な空間として見られはじめ
あるいは洋風に馴染むことが求められはじめ
「古きよきもの」にもデザイン性が求められるようになりました。
そんな中、縁なし半畳市松敷きが考案されたのだと思います。

今では「琉球畳」という言葉が独り歩きしてしまっているので
和室や畳敷きスペースに縁無半畳市松敷きを採用する場合
本来の琉球畳が「青表」を使用するものだとわかると
本物志向のお客様は高価でもこれを求める傾向があったのは確かです。
一方、青表は近年増えてきた薄い畳には使用できないこともあり
代替品として考案されたリーズナブルな
丸い草目積織り表が多く使われるようになりました。
さらに、大手メーカーが工業製品として畳表の製造・販売に乗り出して
製品の特長やデザイン性の観点から
ここ数年は和紙表や樹脂表を選ぶお客様が主流になっています。
現在、弊社では縁無し畳をご希望のお客様には耐久性、デザイン性、加工性などの観点から
縁無し畳をご希望のお客様には基本的に和紙表での施工をお勧めしています。

近年、青表は生産が激減し、高価なだけではなく入手自体が困難です。
青表を使った本来の琉球畳が姿を消す日はそう遠くはないでしょう。

住宅展示場のモデルハウスの和室やCMに登場する和室には
縁無畳が市松敷きになっている場面をよく見かけますので
我が家の畳もあんな風にしたいとお考えのお客様も多いと思います。
縁なし畳の材料にはいくつかの選択肢があります。
それぞれの特徴を理解したうえで
それぞれのお客様に適したものを選んでいただければよろしいかと思います。



我が家にも縁なし畳を、とお考えのお客様は
何なりとご相談ください。
ご要望を伺ったうえでお部屋を拝見し、アドバイスと共に
お客様に最適な縁なし畳をご提案いたします。




最後に、これだけは覚えておいてほしいという意味で
材料に関わらず、縁なし畳について一般的な注意点を書き添えます。

・縁なし畳は巾寸法で畳表に筋を付けて側面へと折り曲げて畳床に縫い付けます。
畳表の内側に強い折り筋が付きますので基本的に裏返しはできません。

・畳表は側面まで回すため、畳表を巾寸法で裁断する縁付き畳に比べ
巾の広い畳表を使用しますので材料費が高価です。
また、折り曲げ作業の分費用が余計に掛かります。
結果的に縁なし畳は縁付き畳より高価になります。
新畳だけでなく表替えの場合も同様です。

・半畳市松敷きの場合は部屋あたりの畳枚数が倍となります。
基本的に半畳ものの価格は一畳ものの7掛けですから
部屋あたりの総額は一畳ものの1.4倍となります。
新畳だけでなく表替えの場合も同様です。

・ある程度の年数を経て畳表面が傷んでしまった場合
畳床の傷みがなければ、縁付き畳同様に畳表だけを交換する表替えが可能です。
ただし、縁なし畳専用機械で製作された畳は糊付け工程があり
本来再利用可能な畳床が使われていたとしても
表替えができずに都度新畳入替となってしまいます。
先々無駄な出費を避けたい場合は施工依頼前に
表替えができる畳かどうかしっかり確認してください。



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